小さなお店に全国から注文殺到するようになったターニングポイントとは?

米Sweets(マイスイーツ) 平田妙子さん

Seki-Bizが提案する手法のひとつに「ターゲットを変えて販路を広げる」というものがあります。

 

アレルゲンフリーのお菓子を製造販売する「米SweetS(マイスイーツ)」は、商品の内容やこだわりは変えず、ターゲットを「子ども」から「若い女性」へと広げたことで急激に販路を広げています。


「アレルギーを持つ子に同じおやつを食べてほしい」という原点


岐阜県産「ハツシモ」の米粉を使い、アレルギー物質27品目を一切使わずに焼いたクッキー「米ッキー」やラスク「米ラスク」、そし26品目を一切使わずに焼いたシフォンケーキ「米しふぉん」を製造販売する菓子メーカー「米SweetS」。

 

主に保育園向けのおやつの製造をしていたが、得意先の園長先生から「小麦、乳製品、卵のアレルギーを持つ子にも同じおやつを食べさせたい」という要望を聞き、米粉を使ったアレルゲンフリーのお菓子を開発。

 2015年 各務原市に店舗をオープンした。

 

米SweetSのこだわりは、アレルゲンフリーでありながらも、美味しさを犠牲にしないこと。

 

「アレルギーを持つ子も、そうでない子もおいしく食べられる」ことはもちろん、添加物や保存料を極力使わず、てんさい糖や米油を使うなど体にいい素材を厳選して使用する。

 

「アレルギーの子たちが、うちのお菓子を口にしてニコッと笑うんですよ。

 

それを見ると、『本当に作っていてよかった』と実感しますね」と米SweetSの平田妙子代表は微笑む。


 

現代病とも言われるアレルギー。

 

食物アレルギーを持つ人の数は近年増加傾向にあるものの、市場規模はそれほど大きくない。

 

アレルギーの子どもや保育園向けの販売は順調だったが、「お店に入ってこられた方が、“アレルギーっ子のための”と書かれているのを見ると、『アレルギーの子ども向けなら、私には関係ない』とすぐに出て行ってしまう。

 

『なんとか販路を広げたい』『アレルギー以外の人にも食べていただくきっかけはないか』と模索していました」


 ちょうどその頃、毎年5月に関市で開催されている「ビジネスプラス展inSEKI2016」に出展。

 

そこで、以前から知り合いだったSeki-Bizスタッフと再会した。

 

「『7月にSeki-Bizが開設されるから、一度遊びに来てよ』と誘われたのがきっかけです。

 

『せっかく誘っていただいたし、一度行ってみようか』と相談に伺いました」


「アレルギーっ子」から「健康志向の女性」向けへ


Seki-Bizは、米SweetSの強みを「大人も楽しめるおいしい味わい」と「柔軟な開発・生産体制」にあると分析。

 

海外を中心に「グルテンフリー」という小麦を摂取しない食事法が注目され始めているトレンドを踏まえ、健康志向の女性を新たなターゲットにすることを提案した。

 

「セキビズの提案はポイントが的確で勉強になります。

 

商品自体をそれほど変えずに、ターゲットや見せ方を少し変えるだけで、これほどガラッと展開が変わるとは想像もしていませんでした」


 さらにSeki-Bizは東京の展示会に参加する際に、「グルテンフリーのお菓子をお客様の要望に応じて開発・生産できる」という強みをPRするようアドバイス。

 

すると大手小売店やセレクトショップなど、想像もしていなかったバイヤーからの引き合いが急増する。

 

 例えば雑貨屋もそのひとつ。

 

「『雑貨屋さん!?』と最初は驚きましたが、Seki-Bizから、「雑貨屋さんにもこうしたナチュラルフードを置くお店が増えていますよ」と聞いて、それから注目して見るようになったんです。

 

そうすると、『なるほど、こういう置き方をするのか』『じゃあ、パッケージはナチュラルな方がいいのかな』と一気に視野が広がりました。

 

それまでの私は『アレルギーの子向けに次は何をしよう』『保育園の誕生会に何を作ろう』とそればかりを考えていて、本当に視野が狭かったですね」


 子ども向けだったパッケージも、ターゲットや販路に合わせてテイストや表記を変えた。

 

「私は何でもかいいから“アレルギー” “アレルギー”って書いていたんですけど、そうすることで逆にお客さまの幅を狭めることを知りました」。

 

 東京駅のセレクトショップで扱われている動物の型抜きをした「アニマルクッキー(米ッキー)」も、表面からは“アレルギー”の文字を消して、極力シンプルに。

 

アレルギーについては裏面にのみ表記したことで、アレルギーの子も、そうでない子にも手に取ってもらえるようになったそうだ。


 2018年3月24日にリニューアルオープンした「空宙博(そらはく)(岐阜かがみはら航空宇宙博物館)」では飛行機の「米ッキー(マイッキー)」の取り扱いも始まる予定。

 

販売したいという動物園や水族館からの問い合わせも多くあり、今後の広がりが期待できる。

 

「売り上げも昨年の夏くらいから徐々に上がってきていますが、何より取引先が増えたことが一番大きい。

 

バイヤーさんがさらに別のお店に紹介してくださったり、海外からの問い合わせも増えて、本当にすごい展開になってきました」


Seki-Bizからのヒントで生まれた新商品


 

 「Seki-Bizから『忙しくて、朝食を食べられない若い女性が増えているので、簡単に食べられるビスケットなどがコンビニの目立つ場所に置いてある』という資料をもらい、『それなら、ラスクがぴったりじゃない?』」と2017年秋頃から相談しながら商品開発を進めきた。

 

米粉を使った「米ラスク」は、低カロリーで繊維質も豊富。

 

カリッとサクッとした食感がおいしく、食べ応えもある。

 

12種類の味わいのある「米ラスク」にはトマトなど野菜の粉を練り込んだものがあり、それをもとに玄米、トマト、にんじん、パセリ、ほうれん草、牛蒡、生姜の7種類のラスクを一袋にパッケージした野菜ラスク。

 

「7種類の野菜はすべて岐阜産で、少量でも栄養が凝縮されている。

 

メインターゲットは若い女性ですが、アレルギーの子も食べられますし、野菜嫌いの子にも食べてもらいたい」と平田さん。

 

あくまで「アレルギーの子も、そうでない人も一緒に楽しんでほしい」という原点は変わらない。

 

「Seki-Bizからのヒントをもとに、27品目の特定原材料アレルギー物質不使用という幹はそのままに、そこから様々な枝を作ることができました」

 

ぶれない幹から伸びる枝は、ますます広がっていきそうだ。


ライター:山田 智子