県内外から常連客を引き寄せる繁盛店がセキビズに通う理由とは?

けいちゃん・からあげ 香月 月川恵理香さん

 美しい緑に包まれた津保川に沿って上流へと走っていると、「けいちゃん・からあげ 香月」という緑色の大きな看板と長い行列が目に飛び込んでくる。

 

テレビでも度々紹介され、県内外から客足が絶えない定食屋「けいちゃん・からあげ 香月」だ。


 関市志津野にある同店は、元保育士の月川恵理香さんが「40歳にまでにお店を持つ」という目標を実現し、2015年10月30日にオープンした。

 

味噌、しょう油、塩タレの「いいとこ取り」をした自家製タレを使った「けいちゃん」は、開店当初から多くのファンを獲得していたが、それでも当初目標としていた売り上げには届かない状況が続いていた。

 

 開店から半年ほど経ったある日、お客さんからseki-bizが開設することを聞いた。

 

「人に話を聞いてもらって、自分のやっていることをもう一度見直すことも大事なことだよ。他人の知恵が入ることで、自分の道がもっと開けるかもしれない。無料だし、一度相談に行ってみたら」と。

 

月川さんは早速seki-bizに予約を入れる。


「もっと売り上げを伸ばしたい」と相談を受けたseki-bizは、「けいちゃん」は「夜に食べる料理」「複数人でシェアする料理」というイメージがあるため、ランチの集客が伸びていないことが要因のひとつだと推察。

 

加えて、中心市街地から少し離れた立地のため、お客さまが遠方からでもわざわざ足を運びたくなるような看板メニューが必要だと考えた。

 

 ディスカッションを重ねる中で、「から揚げにも自信があり、けいちゃんと同じくらい人気がある」との月川さんの言葉を聞いたseki-bizは、コンビニやスーパーでも人気があり、専門店もある「から揚げ」であれば、お客を呼ぶことができると確信する。

 

「けいちゃん」と「から揚げ」。

この二枚看板を際立たせるため、メニュー構成も見直した。

 

焼そば定食やカレーライスなど幅広いメニューを止めて、「けいちゃん」と「から揚げ」に特化するようアドバイスする。

 

 結果的にこのメニュー変更は、ひとつのことを真摯に取り組む月川さんの職人気質とも相まって、大きな成果を生み出すこととなった。

 

「どうしたらジューシーになるか、どうしたらカリカリに揚がるかを日々考えています。

 

まとまったお休みが取れると、必ず各地のおいしいと評判の名店を食べ歩いて、他の方の料理から味や盛りつけなどから、自分の味を培っている感じですね。

 

特にから揚げを見つけると、反射的に買ってしまいますね。

 

先日もランチにビビンバを食べに行ったはずなのですが、『韓国風から揚げ』という文字を見たら食べずにはいられなくなってしまって(笑)」

 

 月川さんが日々おいしさを追求し続けたから揚げは、衣はカリッと香ばしく、やわらかい鶏肉からジュワッと広がる肉汁とタレの旨味が絶妙なバランス。

 

ボリューム満点ながら軽い食べ心地に仕上がっており、お客さんの9割がオーダーするのも納得だ。

 

 改良に改良を重ねたから揚げのつけダレは、「現時点ではもうこれ以上は難しい」というほど究極のレベルに達しているという。


 メインのから揚げだけでなく、月川さんは提供するすべてにこだわる。

 

例えばご飯は自家栽培したコシヒカリを炊きたてで提供。

 

「ご飯もまとめて炊いて保温するのではなく、ずっと炊き続けているんです。

 

普通のお店でやらないようなことばかりしているので、経営者としては全然ダメなんですよね」

 

 もうひとつの看板メニューであるけいちゃんもオリジナリティにあふれて、常連客の心をがっちりと掴んでいる。

 

最初はそのまま。

 

ジンギスカン鍋で鶏肉とキャベツを焼くと、自家製タレの香ばしさが広がり箸がどんどん進む。

 

味が濃くなってきたら、溶き卵につけてすき焼き風に。

 

そしてシメは、鶏とキャベツの旨味がたっぷりしみ込んだタレで作る焼き飯。

 

「けいちゃんの焼き飯はうちの店が発祥というか、他のお店にはないと思います。

 

焼き飯を食べるためにけいちゃんを食べるというお客さんもいますね」。


空中戦 X 地上戦でお店をPR


看板メニューを作ることと並行して、seki-bizは「けいちゃん・からあげ 香月の存在を知ってもらうためのPR施策も提案。

 

まずは、店の前の道路を利用する地元の人やドライバー、ツーリング客の目を惹くよう、冒頭で紹介した大きな看板を設置。

 

看板や暖簾の色を高速道路の案内標識と同じ「緑」にし、視認性を高めて遠くからでも目を惹くようにしたのはseki-bizのアイデアだった。

 

 さらに、SNSを活用し、から揚げファンなどへ幅広くアプローチすることも助言。

 

月川さんは、Facebook、twitter、インスタグラムで毎日欠かさず情報発信をすることを徹底し、特にインスタグラムではから揚げの写真だけを120日間アップし続けた。

 

 インスタ映えを意識した新メニューも開発。クリスマス限定で、からあげとブロッコリー、プチトマト、そして頂上の星ポテトがセットになった「からあげツリー」も販売し、好評を得た。

 

「SNSの更新を毎日続けた結果、少しずつインスタグラムなどを見てもらえるようになり、そうしたら急にお客さん増えてきました。

 

さらに来ていただいたお客さんがクチコミで広めてくださり、お客さんがお客さんを連れてくるといういい流れができました。

 

seki-bizに相談していなかったら、インスタグラムも始めていなかったですし、もう少し苦戦していたんじゃないかなと思います」


こうした取り組みの相乗効果で右肩上がりに売り上げが伸びはじめ、行列ができるようになってきた矢先の2018年7月、お店が西日本豪雨で床上浸水の被害に見舞われた。

 

一時は閉店も覚悟したという月川さんだったが、「香月のから揚げが食べられなくなるのは困る」という営業再開を望む常連客らが駆けつけ、復旧作業を手伝った。

 

器は揃えられず不揃いのまま、1日30食限定ではあったが、なんとか1週間でお店を再開することができた。

 

「私が店に着いた時には、すでに泥がかき出されている状態でした。このご恩に応えるためにも店を続けなければと身が引き締まる思いでした」


開店3年でテレビでも紹介される人気店となった同店だが、月川さんは「『40歳までにお店を開ける』ことをスタートに、自分が決めたことを期限までにやることを続けてきただけです」と控え目に話す。

 

「そういう意味では、Seki-Bizに行くと、次までに『これをします』と宣言して帰るので、それまでに自分の立てた目標をやり遂げようと仕事が進む。その繰り返しが自分にとってはとても合っていた。

 

今はおかげさまで、当初に比べて相談したいことも減ってきていますが、それでも私がseki-bizに行く理由は、『初心を忘れるべからず』という気持ちがあるからです。

 

ずっと続けてきたことをやめるのは簡単ですが、続けるのは難しい。だからseki-bizに行くことをできるだけ続けたいなと考えています」


ライター:山田 智子