支援者の想いを実現するセキビズのサポートの姿勢とは?

とんかつの太田家 太田峻介さん

「名選手、名監督にあらず」とスポーツの世界ではよく言われます。

 

この言葉を飲食店に置き換えれば、優れた料理人が必ずしも優れた経営者とは限らないと言うことができるかもしれません。

 

料理人としての確かな腕と実績を持ちながらも、経営者としては未経験だった太田さん。

 

「とんかつの太田家」オープンに向け、Seki-Bizはひとつひとつの準備を一緒に進めながら、理想のお店作りをサポートしました。


職人のまち・関市で始めた、“とんかつ職人”の挑戦


 2017年10月5日、「とんかつの太田家」をオープンした太田さんは静岡県浜松市出身。

 

京都の日本料理店で5年ほど修行し、その後約10年とんかつ専門店で腕を磨いてきた。

 

チェーン店に勤務していたとき、奥さんが関市の出身ということもあり、東海エリアの新店舗の立ち上げを任された。

 

「いずれは自分の店をやりたいという目標を持っていましたが、どこでやるかなど具体的には考えていませんでした」と話す太田さん。

 

「関市を開業の地に選んだのは、個人のお店ががんばっている環境だったから。

 

僕の出身地の浜松はチェーン店ばかりで、個人のお店が続かない土地柄。

 

関は本来ライバル関係にある飲食店同士でも仲がよく、よそ者の私にも『この業者はいいよ』と教えてくださるなど、安心してお店を始められると感じました」


 Seki-Bizを知ったのは、お店の場所を決め、開業に向けていよいよ本格的に動き出そうとしているころだった。

 

関市の広報で事例紹介を見て、「こんなところがあるんだと。無料だし、おもしろそうだから一度行ってみよう」と個別相談に訪れた。

 

「Seki-Bizでは、『お店とは』というところから教えていただきましたね。

 

僕はとにかくおいしいとんかつを提供することしか頭にありませんでした。

 

お店の魅力をどう伝えるか、看板やロゴをどうするか、営業時間や価格など、お店全体を見ることができていなかったし、そういう知識も全くありませんでした。

 

もしSeki-Bizに行かずにオープンしていたら、とんでもないことになっていたんだろうなと恐ろしくなりますね」


SEKI-BIZとともに、お店も丁寧に丁寧に“仕込む”


 「自分のやりたいことが全てできている」という太田家のとんかつには、これまで培ってきた経験や技術、おいしさへの探究心が凝縮されている。

 

 材料である豚肉は、飛騨の自然豊かな環境の中で徹底した衛生管理のもとで育てられた「飛騨豚」のみを使用。

 

サクサクしっとり食感の“剣立ち(けんだち)”した衣を実現するため、10店以上から比較し厳選したパンを、注文を受けてから店内でパン粉に挽く。

 

それを高温、低温の植物油で二度揚げすることで、サクっと音のする軽快な食感と、豚肉のジューシーな旨味と甘みを堪能できる極上のとんかつに仕上げる。


 ソースや味噌、付け合わせにも一切の妥協はない。

 

「この地域は味噌で食べる文化なので、中途半端なソースでは太刀打ちできない」と浜松にあるソース会社から取り寄せた無添加ソースを3種類ブレンドし、太田家のとんかつを引き立てるまろやかなソースを提供。

 

風味の良い味噌だれは、味噌蔵から直接仕入れた味噌をお店で合わせている。

 

「さすがに岩塩だけはヒマラヤに取りにいくわけにはいかないですが…(笑)。作れるものはすべて作っています」と太田さん。

 

海老フライのタルタルソースや漬けものに至るまで丁寧に手作りしている。


こうした細部にまで徹底的にこだわった仕事ぶりを聞いたSeki-Bizは、「丁寧に丁寧に仕込む とんかつの太田家」というコンセプトにその姿を集約。

 

全面的に打ち出すことを提案した。

 

しかしおいしさへのために手間ひまをかけることは、料理人である太田さんにとっては当たり前のこと。

 

「こだわってはいるんだけど、そこを隠した方がカッコイイと思っていた」と語る。


 各テーブルに置かれているこだわりを伝えるPOPも「本当は置きたくなかったんですよ。

 

チェーン店みたいで安っぽいというか、お店のレベルを下げているように感じた」と最初は前向きではなかったが、

 

「Seki-Bizから『せっかくこだわっていることを情報として発信せず、お客さまに理解してもらえなかったら、その価値が伝わらないままなんじゃないでしょうか』と言われて、確かにおっしゃるとおりだなと思いました。

 

お店のこだわりを明確に見せた方が、『だからおいしいんだ』と感じてもらえるんじゃないかと」


 お店の存在や魅力を伝え、来店を促すために重要な役割を担うホームページも、「おいしいものさえ提供していれば、お客さまに来ていただけるだろう」と制作する予定はなかったという。

 

「見せ方というものを全く知らなかったんですよね。

 

Seki-Bizと一緒に自分が伝えたいことをまとめる中で、自分がやりたいことを再認識できました。

 

ホームページのコンセプトを見て興味を引かれてきていただく方もいらっしゃいますし、ホームページを作ったことは本当に大きかったですね」


 コンセプトやホームページに続き、看板やロゴ、営業時間やメニュー構成、価格なども一緒に検討していった。

 

「ロゴの雰囲気を相談したり、関市内の飲食店の営業時間や価格帯をまとめた参考資料をいただいたのは助かりました。

 

今まではチェーン店の営業時間や価格が決まった中でやってきていたので、それについて疑問に思ったこともありませんでした。

 

一から自分で全部調べようとしたら大変ですから、まさに“サポート”をしていただいたなと思います」


一徹者を解きほぐした絶妙な距離感


 これまで勤務していたチェーン店でもコンサルタントからアドバイスを受ける機会はあったが、「言ってることは間違ってないんだけど、すっと入ってこなかった」と太田さん。

 

しかし「Seki-Bizは相談者との距離感が絶妙だったので、受け入れることができた。

 

ガチガチになりすぎていた気持ちを、色々と解きほどいてもらった感じですね」と笑う。


「コンサルタントの先生から『これやりなさい』『こうした方が利益が絶対伸びる』と言われても、『そんなに言うなら自分でお店をやればいいのに』と反発する気持ちがありました。

 

でもSeki-Bizの場合は、『こういうのはどうですか』『こういうのもありますよ』と第三者の視点から検討材料をくださる。

 

最終的に決めるのはあくまで僕というところも自分にはしっくりきたのだと思います。

 

 今も月に1度くらいのペースでSeki-Bizに行っていますが、最近は予約が取りづらくなっているんです(笑)。

 

関市は僕のような職人気質の人が多いので、おそらくSeki-Bizの絶妙な距離感がハマったんじゃないですかね」


 ランチの始まる11時半を過ぎると、続々とお客さんが訪れ、あっという間に店内は埋ってしまう。

 

「まだ開店して5ヶ月しかたっていないですけど、週に1度必ず来てくださる方もいますし、常連さんたちがお客さんを連れてきてくださったり。

 

少しずつ浸透しているという手応えを感じています。

 

自分が本当においしいと思って作るものを、お客さまがおいしいと思ってくださることが何よりうれしい。

 

これから地元に愛されるお店を作っていきたいです」とカウンター越しに見える太田さんの表情には充実感がにじむ。


「Seki-Bizにお店を紹介していただくことで、異業種の方と知り合いになるきっかけにもなります。

 

実際に取引するまでには至りませんでしたが、仕入れ業者さんをご紹介いただいたのもありがたかったです。

 

僕もSeki-Bizで聞いたお店に行くこともありますし、関市のいいつなぎ役になっていると感じています」

 

開業はあくまでスタート。

 

これからも太田さんの理想のとんかつと愛されるお店を極める道は続く。

 

「本当に関市で開店して恵まれていました。これからもいつでも相談できるという安心感がありますし、これで無料なのが信じられないくらいです。」


ライター:山田 智子